医学統計のための線型混合モデル
『ファルマシア くすりの科学』(日本薬学会)
Vol.37-No.8 2001/8月号 「新刊紹介」P726に掲載

 医薬研究に従事する我々にとって、観察されたデータの統計解析は避けては通れない道ではあるが、時間測定・反復投与での実験やクロスオーバー研究などの一筋縄ではいかない実験計画に直面すると、データの解析の難しさに当惑させられることもしばしばである。このような、複雑な構造を持ったデータを解析するための手法として注目を浴びているのが、本書で取り上げられている線型混合モデルである。例えば、経時観察データの解析においては、データ中に欠測値が存在し、あるいは対象者毎に測定回数や時点が異なっていても解析が可能であるなど、線型混合モデルは多くの点で優れた手法を提供するが、背後にある数学的な方法論が難解であるため、敷居が高く、活用が難しいモデルであるということもまた事実であった。
本書は線型混合モデルの理論的解説より、むしろ医薬データを豊富に例示して、いかに本モデルでの解析を実践するかを重視した。教科書として、あるいはhow to本として、研究家や実務家の立場から非常に参考になる1冊であり、線型混合モデルの医薬分野での応用を詳説した日本語のテキストとしては現在最良のものであろう。なお、本書中ではSASのMIXEDプロシジャで解析例を、プログラムを挙げて示しつつ手法に対する解説が進んでいくため、本プロシジャに興味のあるSASユーザーには、入門書として特に薦められる。

(小林弘幸)


閉じる